研究概要 |
骨形成因子を効果的に臨床応用するためには,骨誘導能を阻害することなく,一定期間同因子を局所に保持することの可能な担体を開発する必要がある。本研究では骨形成因子の担体として,生体吸収性高分子材料を応用できる可能性について検討した。 前年度までに吸収性高分子は良好な骨親和性を示すこと,脱灰骨の骨誘導能を阻害しないことが確認されたため,今年度は脱灰骨からグアニジン塩酸によって抽出し,沈澱分離によって得た粗抽出骨形成因子と吸収性高分子の複合体をラット皮下に埋入した場合の骨形成状態について組織学的ならびに形態計測学的に検討した。 その結果,1.埋入後2週目に吸収性高分子を含む結合組織中に梁状骨の形成が認められた。2.吸収性高分子周囲には異物反応が見られたが,一部では新生骨が吸収性高分子を取り囲むように増生する所見も得られた。3.複合体の埋入によって形成された骨組織の最大割面および軟X線不透過領域の面積は,骨形成因子単独埋入の場合よりも有意に大きい値を示した。 今年度の研究結果から吸収性高分子は,骨形成因子の骨誘導能を阻害せず,骨形成量を増加させる作用を持つことが明らかとなった。 本研究から,今回検索した吸収性高分子は,いずれも経時的に生体組織に置換される吸収性材料であり,良好な骨親和性を示すこと,骨形成因子の骨誘導活性を阻害しないことが確認された。また,骨形成量を増加させる作用も示したことから,これら吸収性高分子は骨形成因子の担体として応用できるものと考えられる。
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