研究概要 |
骨形成因子を効果的に臨床応用するためには,骨誘導能を阻害することなく,一定期間同因子を局所に保持することの可能な担体を開発する必要がある。本研究では骨形成因子の担体として,生体吸収性高分子材料を応用できる可能性について検討し,以下の知見を得た。1.3種類の吸収性高分子(分子量の異なる2種類のポリ乳酸およびグリコール酸・乳酸共重合体)をラット脛骨骨髄腔内に埋入し,その組織反応を経時的に観察した。その結果,2週目に吸収性高分子周囲の肉芽組織中に新生骨形成が認められ,4から16週目には吸収性高分子を取り囲んで新生骨の増生する所見が得られた。また,好中球,リンパ球の浸潤がほとんど認められなかったことから,これら吸収性高分子の骨親和性を確認できた。2.ラット脱灰骨と吸収性高分子の複合体をラット皮下に埋入した。その結果,軟骨内骨化を経た4週目には骨髄組織を備えた新生骨の形成が認められ,吸収性高分子は脱灰骨の骨誘導能を阻害しないことが明らかとなった。3.脱灰骨からグアニジン塩酸によって抽出し沈澱分離によって得た粗抽出骨形成因子と吸収性高分子の複合体を皮下に埋入した場合の骨形成状態について組織学的ならびに形態計測学的に検討した。その結果,2週目に吸収性高分子を含む結合組織中に梁状骨の形成が認められた。また,複合体によって形成された骨組織の最大割面および軟X線不透過領域の面積は単独埋入の場合よりも有意に大きい値を示し,吸収性高分子は,骨形成因子の骨形成量を増加させることが明らかとなった。 本研究の結果から,今回検索した吸収性高分子は,いずれも経時的に生体組織に置換される吸収性材料であり,良好な骨親和性を示すこと,骨形成因子の骨誘導活性を阻害しないことが確認された。また,骨形成量を増加させる作用も示したことから,これら吸収性高分子は骨形成因子の担体として応用できるものと考えられる。
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