歯周疾患の主要な原因はポケット内の細菌であり、一方生体側の因子も歯周疾患の進展に重要である。全身疾患である糖尿病患者に歯周疾患が高頻度にみられることが示唆されているが、そのメカニズムについては不明な点が多い。そこで、我々は歯周炎関連菌であるグラム陰性菌の外膜主要構成成分であるリポ多糖体(LPS)に注目し、LPSが糖尿病患者の多形核白血球(PMN)に及ぼす影響について検討を加え、歯周病を有する糖尿病患者で実際にPMNの機能変化がみられるのかどうか、また機能変化にLPSが関与しているかどうかを検索することを目的に本実験を開始した。 現在までに、Porphyromonas gingivalis(Pg)とPrevotella intermedia(Pi)から温フェノール水法にてLPSを分離し、これらのLPSとE.coli由来LPSを健常者のPMNに作用させ、その機能変化を調ベた。FMLPを刺激剤としてケミルミネッセンス法によりPMNの活性酸素産生能に及ぼすLPSの影響を検討したところ、PMNを10μg/mlの濃度の各LPSで15分間前処理するといずれのLPSも活性酸素産生を上昇させる作用が認められた。なお、PiLPSにくらベPgLPS、EcLPSではその作用は弱かった。また、PMNの膜流動性に対する作用をTMA-DPHをプローブとして蛍光偏光解消法にて測定したところ、10μg/mlの濃度のLPS処理により、PiLPSでは膜流動性の著明な亢進が認められた。従って、LPSが多形核白血球に対してその機能を変化させる何らかの作用があることを確認した。 以上の結果をもとに現在糖尿病患者のPMNに対する各LPSの作用を症例数を増やし検討中である。今後、さらにPMNにより産生された活性酸素が、歯周組織構成細胞である線維芽細胞に及ぼす影響についても検討を行なう予定である。
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