研究概要 |
審美インレーの修復窩洞への合着には,デュアルキュアータイプのレジンセメントが広く用いられている。しかし,このセメントは光重合の性能が高く,デュアルキュアの意図に反し光線の到達しない窩洞深部での重合性が低下することが判明した。そこで,粉液構成になっているデュアルキュアータイプのレジンセメントを用いて,その練和に先立って液体に含有されている光活性物質を照射して活性化させておいてから練和するという,前照射方式について実験を行ってきたが,現在までに得られた知見について報告する。 1.前照射方式によるセメント泥の硬化時間は,セメントに対する照射を行わなかったもの(未照射方式)に比較して20〜40%程度短縮した。すなわち,前照射方式によりレジンセメントの硬化反応が進行することが明らかとなった。 2.前照射方式によるセメント泥の被膜厚さは,未照射方式によるものと比較してほとんど同程度であり,臨床的見地からも前照射方式を用いても,臨床操作余裕時間があることを示すものであった。 3.前照射方式によるセメントの圧縮強さ,曲げ強さおよび歯質接着性は,未照射方式あるいは製造者指示の照射方法と比較しても同程度,あるいは高くなる傾向を示し,機械的物性を向上させる可能性があることが明きらかとなった。 4.レジンセメントの重合率についてFTIRを用いて検討したところ,前照射方式による重合率は未照射方式によるものに比較して高くなることが判明した。 以上のように,レジンセメントの液体に対する前照射方式は,光線が透過しにくい窩底部であっても,その性能を十分に発揮することが可能であり,臨床的に有効な手段である可能性が示唆された。
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