研究概要 |
デュアルキュアータイプのレジンセメントは,光重合の性能が高く,光線の到達しない部分での重合性が低下することが判明した。そこで,粉液構成になっているデュアルキュアータイプのレジンセメントを用いて、その練和に先立って液体に含有されている光活性物質を照射して活性化させておいてから練和するという,前照射方式について検討を継続して行ってきたが,現在までに得られた知見について報告する。 1.前照射方式によるセメント泥の硬化時間は,セメントに対する照射を行わなかったものに比較して短縮する傾向が認められ,前照射方式によりレジンセメントの硬化反応が進行することが明らかとなった。 2.前照射方式によるセメント泥の被膜厚さは,未照射方式によるものと比較してほとんど同程度であり,臨床的な操作余裕時間の点からも前照射方式の有効性を示すものと考えられた。 3.前照射方式によるセメント硬化物の圧縮強さ,曲げ強さおよび歯質接着性は,未照射あるいは製造者指示の照射方法と比較して同程度,あるいは高くなる傾向を示し,機械的物性を向上させる可能性があることが明らかとなった。 4.前照射方式によるヌープ硬さ曲線は,製造者指示方式に比較して,深部においてヌープ硬さの上昇が顕著であった。これは,前照射によって励起状態となった重合触媒が,練和されることによってセメント硬化物全体の重合率を上昇させたものと考えられた。また,FTIRを用いた重合率の検討によっても,前照射方式による重合率は未照射方式によるものに比較して高くなることが判明した。 以上のように,レジンセメントの液体に対する前照射方式は,光線が透過しにくい窩底部であっても,その性能を十分に発揮することが可能でな臨床手段となる可能性が示唆された。
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