研究概要 |
平成4年度に於ける研究成果は以下の如くである。 各種市販臼歯コンポジットレジンを用い,内外径比0.5(内径8mm,外径16mm)のリング試験片をテフロン製モルドにて製作し,油圧式サーボパルサに治具(4年度構入備品)を装着して試験片に疲労予亀裂を1〜2mm導入してK_<1c>を測定し,リング試験片の特性を検討した.また,本試験片を用い,各種市販コンポジットレジン試験片を水中に24時間〜6ヶ月間,また,4℃と60℃のサーマルストレスを連続的に約1ヶ月間与え,K_<1c>の変化を検索し,破面を観察した.その結果以下のような実験成果が得られた. 1.本研究で用いられたリング試験片は,K_<1c>測定に理想的である疲労予亀裂の導入とその制御が極めて容易であり,相対亀裂長さが0.62<(a+Ri)/Ro<0.76という広領域で亀裂伝播速度が一定である応力拡大係数一定試験片であるため,亀裂長さの正確な測定が不要であり,より正確なK_<1c>の測定ができることが確認された. 2.市販コンポジットレジンの中で比較的大きなサイズのフィラーから構成される製品のK_<1c>は,小さなサイズのものと比べ有意に高い値を示した.また,水中浸漬を行うと3ヶ月までにK_<1c>が著明に低下した.また,サーマルストレスは水中浸漬より早期に劣化させることが示され,水および熱疲労がコンポジットレジンの材質劣化の大きな要因となることが示された. 3.それら試片の破面をSEMおよびEPMAにて観察したところ,水中浸漬6ヶ月でフィラー表面が明らかに露出するような象が観察され,レジン-フィラー界面が水の影響を受け,劣化する可能性が示唆された. 以上の研究成果は第19回日本理工学会,第96回日本保存学会春季総会,第27回神奈川歯科大学学会総会で報告し,日本歯科保存学会誌35(2),346〜354,1992年,および日本歯科保存学会誌36(1),82〜91,1993年に掲載した.
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