研究概要 |
平成6年に於ける研究成果は以下の如くである。 コンポジットレジンの破壊靱性に対するフィラー粒径ならびに形状の影響を検討するために,試作コンポジットレジンを作成し,リング試験片を用いてアコースティックエミッションの計測を併用した破壊靱性試験を行い破壊過程における挙動を検討すると共に,臨床でコンポジットレジン材料と併用されるグラスアイオノマーセメントのKlcを測定して,両者の比較ならびにコンポジットレジンとの接合修復の可能性を検討した。 1.充填率が70wt%に統一された同程度の粒径を有する試作コンポジットレジンにおいて,粉砕フィラーは球状フィラーと比較して有意に高い破壊靱性値(S-7.9:1.06MPam^<1/2>,C-7.9:1.20MPam^<1/2>)を示したことから,粉砕フィラーは不定形であるため,破壊亀裂伸展に対し,亀裂の分岐が生じたことが示唆される。 2.破壊靱性試験の際,球状フィラーはpop in荷重付近で急激にAE信号が増大するのに対し,粉砕フィラーはpop in荷重より事前にAE信号が徐々に発生した。粉砕フィラーはこの様なAEの挙動はフィラー製造過程に生じたフィラー自体のマイクロクラックが微視的破壊を起こし,加えてこの微視的破壊におけるエネルギーの消費が疲労亀裂先端に加わるエネルギーを減少させ,高いKlcを生じさせたと推察される。 3.上記結果より,コンポジットレジンの破壊靱性はフィラー平均粒径およびモード径のみならず,フィラー形状が強く影響することが示された。 4.グラスアイオノマーセメントでは,光硬化型で,0.85-0.89MPam^<1/2>,化学硬化型で0.35MPam^<1/2>のKlcが得られ,市販コンポジットレジンHeliomolar(0.6),Prisma microfine(0.62)を越える値を示した。
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