本年度は、主としてシーラーの物理学的性状に関して検索した。すなわち、根管壁着性に関連する根管壁面およびシーラーの表面性状として、象牙質およびシーラーの根充後の根管と根充剤との界面の形態観察を原子間顕微鏡(以下、AFMと略しますが)にて観察した。低倍率から高倍率のAFM像では、一つの象牙細管は、約2μmであり、象牙細管間の距離は1132nm、深さは15.44nmであることがわかった。また、3次元像では、一個の象牙細管が火山の噴火口様形状を呈していた。 次に、中切歯の根管拡大、形成をハンドリーマーNo90まで行った後、レンツロにてAH26のみ、およびAH26とガッターパーチャーポイントにて加圧根管充填を行った根管試料の象牙質部のAFM像は、研磨痕および象牙細管の走行状態を示す像が認められたが、シーラーのみの試料では、シーラー部の表面の凸凹が大きく、界面のすき間が大きいために結像しなかった。しかし、ポイントを付与した試料では、象牙細管と根充剤の界面での状態は剥離していなかったが、界面部の粗さが幅7μm、深さ1μmの亀裂を示し、象牙質と根充剤が緊密に結合している像は認められなかった。すなわち、加圧根充を行っても、根充剤と根管との間には、いわゆる死腔が存在することがわかった。 以上の結果から、この壁着性に関しては、2つの課題が残る。 1つは、根充剤として望ましいのは、根管壁面と根充剤が完全に結合している必要があるのかどうか、逆に、多少の死腔があっても許容されるのかどうか。 2つ目は、結合しているとすれば、物理的結合か、あるいは化学的結合なのかという問題である。
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