研究概要 |
シロサンゴを粉末化し、300℃,400℃,500℃に焼成したものと、未焼成のサンゴを実験に用いた。実験歯にはネコ10匹、イヌ10匹及びヒトの歯を使用し、生活歯髄切断を行った後、粉末サンゴを純水と練和して直接覆髄剤として用いた。各々に温度焼成したサンゴの成分は、ほとんど同様であり、多量のCaの他にAl,Mg,P,Feが検出された。X線回折により、XDRパターンの2θにわずかなズレが見られるものの炭酸カルシウムの1種であるCalcite(2θ=29.4゚,35.9゚,39.5゚43.2゚,47.5゚,48.6゚)とほぼ一致した回折角を示した。従ってほぼ炭酸カルシウムが主成分と思われる。未焼成のものは、この他に有機成分として蛋白質が微量含まれるものと考えられた。500℃焼成したコーラル(500℃ Coral)とイヌ10匹に用いた光顕及び電顕用組織標本の結果の一部においては、対照群の水酸化カルシウム貼布に比べて、硬組織被蓋形成は2〜3週間遅れる傾向が認められた。また、明確なる硬組織形成は少なく、線維性の結合組織より成る厚い層が断髄面に生成されるものが多く見られた。硬組織形成が行われる前の状態、即ち、Preodontoblastが配列される状態の時期においては、しばしば神経の終末が見られた。特に有芯小胞と呼ばれるデンシティーの高い顆粒を含んだ小胞が認められ、また、無芯小胞と呼ばれるベジクルを多数含んだ神経終末部が見られた。これらの終末部は石炭化を活発に行っている石灰化前線の細胞に密に接している所見が多く見られた。さらには、有芯小胞の高デンシティー顆粒がPredentin内に放出し、この現象はあたかも石灰化現象に関与している様相を呈する所見が見られた。まだ一部の試料のみの観察であるが、サンゴの直接覆髄の場合、1カ月以上経過しないと硬組織形成の兆候すら見られないような傾向であるから、次年度は5%の水酸化カルシウムを添加する予定である。
|