研究概要 |
過酸化ベンゾイル(BPO)は義歯床用材料,床リベース材料の重合開始剤として広く用いられている。BPOラジカルは脂質過酸化作用を惹起させ,口腔粘膜などを障害させる可能性がある。生体にはペリオキシラジカルを捕捉消去する種々の抗酸化剤が存在し,ラジカルによる生体障害性を保護している。メチルメタクリレートに抗酸化剤(ビタミンA,ビタミンE,Di-t-butyl-p-cresol,β-カロチンを種々の濃度に溶解させて,BPOで70℃,DSC重合を行なった。重合率-時間曲線を記録した。この曲線より初期重合速度,誘導期間を算定し,各種抗酸化剤のラジカル捕捉消去効力を比較した。 BPO(1.0モル%)系でα-トコフェロールを0.2〜0.7モル%変化させると誘導期間は28分から168分と著るしく長くなった。これに反し初期重合速度は0.64〜0.28(%/min)に減少した。AIBN系は濃度の影響を受けなかった。VitaminAは濃度により誘導期間も初期重合速度も大きな影響を受けなかったが,β-カロチンは0.5モル%で70℃,6時間の加熱でも重合はまったくおこらなかった。以上のことから,各種抗酸化剤が,BPOとAIBNに対し相互作用が異なり,誘導分解するBPOに対し作用が大きいことが分った。まだ連鎖遮断型のビタミンEとラジカルトラップ型のβ-カロチンとで,ラジカル捕捉挙動が異なることが分かった。この両者は高濃度でMMA中強いラジカル捕捉作用を示すことが明らかになった。
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