研究概要 |
最初に,予備実験として三点曲げ試験を行い,変形過程のアコースティックエミッション(AE)を測定して解析した.JIS2種チタンを空気中で加熱して表層にαケースを生成させたものと,シリカーアルミナーリン酸塩埋没材の鋳型に鋳造したチタンを試験に供した. 加熱試験片の場合,加熱温度が高いほど弾性限が高くなる.受け入れ材は塑性変形に移行した後に弱いAEが散発的に発生したが,加熱試験片では塑性変形に移行する前から低振幅AEが多発した.光顕と二次電子像の観察から,このAEはαケースにき裂が発生する過程に対応することが示唆された.また加熱温度が高い場合は,塑性変形に移行する前から高振幅AEも断続的に発生し,αケースのき裂が内側の針状組織層内に進展してジグザグに成長した.これはき裂が停留と進展を交互に繰り返すためで,針状組織がき裂進展に抵抗することを示唆する. 鋳造体の場合も変形の初期から低振幅のAEが多発し,αケースに多くのき裂が観察された.ただ,き裂進展の様相は加熱試験片の場合と異なる.例えば室温鋳型に鋳造したものは,き裂が大きく開口するだけで,内部への進展は顕著ではなかった.これに対して高温鋳型に鋳造したものは,低振幅ではあるが持続時間の極めて長いAEが変形の初期に検出され,また変形の後期においては持続時間の短い低振幅AEの発生を伴いながら,き裂は内部へ深く進展した.この理由は,鋳造体の場合はき裂の進展に抵抗する針状組織が加熱試験片ほど厚くなく,また針状組織の内部はき裂進展抵抗が小さい等軸晶様の粗大粒であるためと推定した. このように,αケースの厚さや針状組織の発達具合によってき裂の発生と進展挙動が異なるので,鋳型材の種類や鋳型温度が疲労破壊に大きな影響を及ぼすと考えられる.現在,加熱試験片の四点曲げ疲労試験を行いながら,疲労試験過程で発生するAEの測定方法を検討している.
|