修復用光硬化型グラスアイオノマーがまだ我国に市販されていなかったため、平成4年当初度には裏層用光硬化型グラスアイオノマーを利用して、修復用として活用するため、粉液比の増加が窩洞(人歯象牙質およびテフロン製)辺縁部と充填物の間に生じる間隙、人歯象牙質に対する接着強さに及ぼす影響を検討し、修復用として適切な粉液比を類推し、充填用に流用しようと試みた。 その結果、窩洞辺縁部と充填物の間に発生する間隙は、象牙質の場合には粉末量を増加しても有意に減少しない(p>0.10)が、テフロン窩洞の場合には有意に減少した(p=0.05)。すなわち、粉液比とテフロン窩洞間隙の間には高度に有意な関係(Fuji Lining LC:GC社の場合、r=-0.985、p<0.001; Vitrebond:3M社の場合、r=0.988、p<0.001)があった。象牙質に対する接着強さは、Fuji Lining LC、Vitrebond共に粉液比が0.9〜2.4g/1.0gの範囲内では粉末量の増加に伴い有意に増加した(p=0.05)。上述の結果から、平成4年度の計画である裏層用光硬化型グラスアイオノマーを充填用として流用する場合の粉液比として粉液比=2.4〜2.9g/1.0gの範囲が適当であると判断した。しかし、修復用として気掛かりな辺縁部の間隙は、この範囲の粉液比でも裏層用の粉液比と比較してなんら有意な減少はみられなかった(p=0.05)。その理由として、まず粉末量の増加に伴い象牙質に対する"濡れ"が悪くなったため。また、硬化途中、グラスアイオノマーが象牙質と接着するため、グラスアイオノマー自身の硬化収縮により、練和泥が充填時と比較して、より象牙質壁に流動して間隙発生を最小限に留めるようとするが、この流動性が鈍くなったため、グラスアイオノマー自身の硬化収縮は減少するが、結局は間隙の減少にはなんら影響しなかったのではないかと考えた。 次の実験として、修復用光硬化型グラスアイオノマー(Fuji II LC:GC社)が市販されたため、この材料の適切な術式について検討した。まず、硬化直後に発生する辺縁部間隙について測定した。その結果、約0.4%(窩洞直径に対する比率)の間隙が発生することが判明した。そこで、間隙発生の防止策として、研磨時期を遅らせた場合の効果について、現在実施中である。
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