研究概要 |
成熟wistar-rat(400〜500g)をペントバルビタール(60mg/Kg)の腹腔内投与により麻酔した。以後の麻酔薬、神経筋遮断剤(デカソミニウム)などの薬物投与のため静脈確保(右側内頚静脈)を行った。そしてラットを脳定位固定装置に固定した。その後、頭蓋骨の一部を削去し、実験に必要な部位(眼窩下神経、三叉神経脊髄路核尾側亜核)を露出させた。それから人工呼吸下で、神経筋遮断剤で非動化後、電気生理実験を行った。実験は全て眼窩下神経(IoN)を電気刺激し、三叉神経脊髄核尾側亜核(SpTc)から応答を得た。IoNのA-線維、C-線維のSpTcへの投射地図作製のため、IoN刺激によるSpTc応答(EPSP:興奮性シナプス後電位)を次のように求めた。まず、A-線維の閾値C-線維の閾値を求めた。(A-、C-線維刺激の応答であることは閾値、伝導速度、Capsaicinに対する感受性により同定した)。それにしたがってSpTcにおいてA-線維、C-線維の応答強度を三次元的(rostro-caudal,ventro-dorsal方向)に求めた。得られた刺激-応答のデータはデータレコーダで磁気テープに記録し、シグナルプロセッサーで解析を行った。その解析よりA-線維、C-線維各々の応答波形が位相反転する層(SpTcはI〜V層の層状構造を持つ)を見い出した。これがシナプスの存在する部位であり投射部位である。そこにdyeを電気的に流し、凍結連続切片により光顕標本を作製し、組織解剖的に部位同定した。以上によりA-線維とCapsaicin感受性線維に関してSpTcにおける各々の投射地図の作成を行ってきている。その結果から次のような点が判明してきた。IoNのA-線維群のSpTcにおけるシナプス部位は、N、MIZINOらが示したように体部位再現性が認められた。つまりこの場合は、第二枝であるので、Ventro-Dorsal方向でほぼ中間に位置していること、しかしRostro-Caudal方向ではそれほど強い傾向を示さなかった。また、Lateral-Medial方向ではIII〜IV層にシナプスは存在しているようだ。C-線維に関しては、現在まだ究明中であり明確ではないが、Rostro-Caudal、およびVentro-Dorsal方向については、A-線維に準じているようだが、Lateral-Medial方向ではA-線維と異なり、I-II層の浅い部位にシナプスしているようだ。
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