平成4年度は本研究全体の基礎実験として、健康な成熟ラットを用いて各種顎骨再建材料移植後の反応を組織形態学的に観察し検討した。 1.研究方法:成熟ラットの頭頂骨に骨欠損部を作成し、この欠損部へ凍結乾燥骨、焼成骨、人工ハイドロキシアパタイト、チタン合金のそれぞれを移植した。対照は新鮮自家骨移植を用いた。移植後経時的に試料を採取し、走査型電子顕微鏡観察および準超薄切片を用いた光学顕微鏡観察を行った。 2.結果:対照の新鮮骨移植では、移植後早期に母床の反応による新生骨が移植手術時の障害の少なかった骨膜下で形成され、母床骨と移植骨の接合部で骨性結合が観察された。移植後3週から5週で移植骨は周囲の母床骨と区別出来ないほど良好に生着した。移植骨や母床骨の吸収はわずかであった。移植後2週目から移植骨内に進入した血管周囲での骨改造が見られた。凍結乾燥骨や焼成骨移植では、母床の反応は対照群と類似していたが、結合の仕方は新生骨が移植骨全体を取り囲んで見られた。この反応は焼成骨では対照群と同じくらい早く起こり、また移植骨内の改造も対照群より早期に見られた。しかし凍結乾燥骨では骨結合、骨改造ともに時間的な遅れがみられ、母床骨や移植骨の吸収も著明であった。ハイドロキシアパタイトやチタン合金に対しては母床は同様に新生骨を形成するがその周囲を囲むだけであった。 3.結論:どの材料においても共通した母床の反応は、障害の少なかった骨膜下で新生骨を形成するということである。しかし結合の仕方や改造機転にはそれぞれ差が見られた。このような差が各種移植材料に対してどのような認識機構によるのかを解明することが本研究計画を進めていく上で重要な課題であると考えられた。
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