平成5年度は、年齢や放射線照射など生体側の条件を変えて各種移植材料を移植した場合の生体反応について組織形態学的に検討した。 1.研究方法:生後3週齢および15週齢のラットを用い、下顎骨に作成した骨欠損部に、平成4年度と同様に凍結乾燥骨、焼成骨、人工ハイドロキシアパタイトそしてチタン製金属のそれぞれを移植した。また新しい材料としてオートクレーブ処理骨移植も行った。対照は新鮮自家骨移植とした。さらに生後7週齢のラットに^<60>Coを照射し、照射後2および4週目に新鮮自家骨移植を行って、放射線照射後の治癒についても検討を行った。 観察は両者とも移植後経時的に試料を採取し、走査電子顕微鏡および光学顕微鏡を用いて観察を行った。 2.結果:(1)年齢差による治癒の違い;従来通り、移植後の新生骨形成は若年の方がわずかに早かった。しかし各材料に対する反応は、高年、若年の差はなく平成4年度の結果とほぼ類似していた。(2)オートクレーブ処理自家骨移植;組織形態学的かつ時間的に新鮮自家骨移植と同様の治癒を示し、さらに移植骨の新生骨による置換は、対照より早く行われることが示唆された。(3)放射線照射の影響;照射後2週目に移植したものより4週目の方が対照に近い治癒経過を示した。照射後2週目のものでは、術後の血管新生が遅れるようであった。 3.結論:これまでの研究から、移植材料のもつ骨誘導能、骨伝導能も重要な問題であるが、それに対する生体側の反応、とくに各材料に対する認識機構の解明が重要な課題と考える。このためにはまず移植床周囲の反応として血管の新生と発達、さらに情報伝達機構の一つとしての神経系(神経伝達機構)について検討する必要があると考えられた。
|