研究概要 |
[平成6年] 平成6年度は,放射線照射後の骨移植に対する生体反応を年齢差によって比較検討した.また移植後の新生骨形成には血管の新生が重要であり,移植部の血管ヘレジン注入を行い,走査型電子顕微鏡による観察を行った.[1.研究方法]:生後3週齢と15週齢のラットに^<60>Co8Gy1回照射し,照射後2週目と4週目に移植手術を行い組織形態学的に検討した.また移植後の血管新生や移植材料内への血管進入を見るために,レジンの血管内注入法を行い観察した.[2.結果]:(1)放射線後早期に移植した場合,移植後初期の新生骨形成や骨吸収は著しく遅れるが,移植後2ないし3週目以降は対照に類似した治癒過程を示した.これに対し照射後4週間経過して移植したものは,ほぼ対照と同様であった.また動物の週齢をかえてもこれらの結果に大きな差はなかった.(2)移植後の血管鋳型は,まず焼成骨と人工ハイドロキシアパタイトについて観察した.移植初期には両者とも血管の進入が多数みられたが,時間とともに焼成骨での血管進入が少なくなった.これは移植初期には血管を取り囲むように海綿状骨が形成されるが,その骨が移植骨へ進入し成長するに従って緻密骨になり血管腔は減少していくことと関係している.人工ハイドロキシアパタイトでは骨がアパタイト上やアパタイト内に進入することはないため,孔より進入した血管がいつまでも残存してた.他の材料についても検討を加える計画であったが,試料作製時の周囲組織の溶解法など問題点があり,また時間的制限から全ての移植群についての検討はできなかった.(3)移植後の細胞動態を観察するために,免疫組織化学的検討を行った.どの移植においても,移植後1ないし2週目の骨膜下でBrdUrdおよびPCNA陽性細胞の多数の出現がみられた.しかし今回のABC法ではDABによる反応が骨組織にも強く現れ判定が難しく,今後蛍光法や免疫電顕法などで検討することが必要と考える.[3.結論]:骨欠損部への各種再建材料の移植に対する生体の反応は,単に異物処理機構や抗原抗体反応のようなある物質を排除するための機構だけではなく,むしろそれを受け入れるための条件を探る何らかの機構があると考える.今後,サイトカインや各種ホルモンなど骨移植後の骨代謝における細胞間情報伝達機構を詳細に検討することが必要と考える.
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