本研究に関しての方法及び結果については以下の通りである。 生後7週令のシリアンゴールデンハムスターの頬のう粘膜下にO-N株(DMBAにて頬のうに発癌させた固体の転移リンパ節腫瘍の継代株。本学第一口腔外科から分与)を約8mm^3の組織片に細切、移植し、腫瘍増殖各段階においての^<31>P-MRSを測定した。使用機種は動物用NMR装置JEOL製JMN-GX270(静磁場強度6.3T)、使用検出器は表面コイル型JEOL製NM-G27TSPWプローブ(直径10mm/5ターン/送受信兼用)である。測定は、腹腔内ネンブタール麻酔下(約90mg/kg)にて頬のうを飜転固定し、腫瘍部を表面コイルの感度領域内に設置して行った。腫瘍体積は腫瘍の長径a・短径b・高さcを計り、(a×b×c)π/6の式から算出した。測定前には表面コイルのチューニング・マッチングを行い、^1Hの信号でシミングを行った。測定条件は共鳴周波数109.25MHz、繰り返し時間1.90、rfパルス幅15secで、測定周波数帯域はPCrのピークを基準(Oppm)とし、約+45〜-45ppm、得られたFID信号は512回加算した。サンプリング間隔は50μsec・2048ポイントで、30Hzのexponentiallinebroadeningのフィルター関数にてS/N比の向上を図り、フーリエ変換を行ってスペクトルを得、スペクトルには位相補正、ベースライン補正を加えた。スペクトル成分の検討には各成分のピークの高さの比(信号強度比)を用い、細胞内pHは、PCrを基準としてPiの化学シフト(δppm)からpH=6.80-log(5.73-δ/δ-3.22)の式を用いて算出した。尚、腫瘍は移植後10週前後で約1000mm^3に達し、個体は同時期に大部分が腫瘍死した。測定結果であるが、腫瘍体積100〜1000mm^3(測定個体数16匹)に対する各成分信号強度比及び細胞内pHには明らかな相関関係は認められず、同腫瘍に関してのエネルギー・リン脂質代謝及び細胞内pHは腫瘍体積(少なくとも100〜1000mm^3)に依存しない可能性が示唆された。
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