研究課題
本研究の目的は口腔癌の放射線治療に空間的時間的線量配分の再検討を行って局所制御の向上を計ると共に、適応基準を明確にし、口腔癌患者のQUALITY OF LIFEの向上をめざすことである。平成4年度は治療症例数を可能な限り増し、治療経験を積むことを主眼に研究を行った。平成5年2月末現在で我々の目指した根治的放射線治療を遂行することができた口腔癌症例は17例であった。内訳は頬粘膜癌7例、上顎歯肉癌5例、下顎歯肉癌3例、口腔底癌及び舌癌がそれぞれ1例ずつであった。T分類別では、T1:2例、T2:8例、T3:1例、T4:6例であった。これらの症例はすべて従来ならば手術が不可避と判断される症例あるいは外科治療の適応のない症例であった。放射線治療はHYPERFRACTIONATED RADIOTHERAPYを用い、治療期間を従来と同様にして総線量を10‐40%増加させた。再発に備えて十分な経過観察を行い、再発確認後は迅速に対応措置を講じた。治療結果は制御例群10例で、非制御例群は7例であった。T分類別の制御症例数はT1:2例、T2:7例、T4:1例であった。投与された総線量には両群で有意差はなかった。また、平均生存期間にも有意差はみられなかった。再発もしくは腫瘍の遺残があった7例について、それが確認されるまでの期間は2‐7ヶ月(平均3.7ヶ月)であった。制御例では手術による形態的・機能的障害もなく通常の生活が営めている。現在までのところ症例数が少なく統計的な検討を十分に加えることができる段階ではないが、T1、2症例については10症例中9症例と放射線治療単独でも十分に高い制御率を得ることができることが確認された。また、T4症例については放射線治療以外の他の治療手段の併用も考慮する必要があると考えられた。今年度の最も大きな成果は、従来手術が不可避と考えられてきた症例でも放射線治療単独で十分に高い制御率を得ることができることと、それによって治療後、形態的・機能的障害がなく通常の生活が維持できることが確認されたことであった。