研究課題
一般研究(C)
口腔癌に対する多分割照射の有効性を知るために、21例の新鮮扁平上皮癌を対象に、多分割放射線治療が行われた。その結果、以下の事が明らかとなった。1.一回線量の1.2Gyで、4時間の間隔をあけた一日2回照射を行った場合、80Gy程度まではほとんどの症例で休止を置くことなく治療を続ける事が可能であった。2.2年生存率は、T1及び2症例では66.7%であったが、T3及び4症例、特に顎骨の著明な破壊を示すT4症例では、多分割照射によって生存率が大きく改善されなかった。3.局所制御率は線量の影響が原発腫瘍のサイズによって現れた。低いT病期では制御率が高かったことから、従来手術が治療の主体であった頬粘膜癌などは、形態・機能を温存するという立場から多分割放射線治療の適応になるものと考えられた。一方、局所進行癌では、従来と同様の低い制御率であったことから、総線量の増加・化学療法の効率的併用を考慮することが早急な課題と考えられた。4.所属リンパ節転移のあった8症例に治療が行われ、6例で制御された。線量は原発巣と同量であったが、さらに電子線による追加照射が効果的であると考えられた。5.多分割放射線治療による急性反応は通常分割照射よりも強い粘膜炎として生じたが、耐容の範囲内であり治療の休止の必要はなかった。6.晩発反応は観察期間が短く障害について十分に言及できないが、現在までの所、抜歯が誘因と思われる病的下顎骨骨折が一例発生しているのみである。局所制御に失敗し救済手術が行われた症例での手術創の治癒にも特に異常はみられなかった。今回の検討では、他の報告に比べ総線量がやや少なめであったが、総線量を80Gy程度では必ずしも局所制御の向上につながらないようにと思われた。多分割照射に化学療法を併用することが治療結果の改善のための有力な選択肢の一つと考えられた。