1、ヒト培養細胞として、健康成人の末梢血より比重遠心法で分離調製したリンパ球、株化細胞として唾液腺癌細胞であるHSG細胞を用い、培養開始後種々の濃度(0.1〜10μg/ml)のニューキノロン剤およびDNA-トポイソメラーゼIIの阻害剤であるエトポシド(VP‐16)を含む増殖培養液に交換し、細胞の増殖および形態の変化を検討した。検討したニューキノロン剤はロメフロキサシン、シプロフロキサシン、ノルフロキサシン、オフロキサシン、エノキサシンの5剤である。その結果、エトポシドでは0.5μg/ml以上の濃において濃度依存的にヒトリンバ球、HSG細胞のいずれも著明な増殖抑制と細胞形態の変化を認め、特に10μg/mlでは1週間後の生存細胞は1%以下であった。ニューキノロン剤処理群では末処理対照群と比較して、リンパ球の増殖を促進する傾向が見られたが統計学的に有意なものではなかった。またHSG細胞の形態にも影響を及ぼさなかった。 2、4μg/mlのニューキノロン剤を含む増殖培養液でヒトリンパ球を72時間培養し、その後通法により染色体標体を作製し異常の有無を検索した。その結果、50細胞中末処理対照群では、染色分体部ギャップ3、染色分体部ブレイク1、計4の異常の対し、ニューキロロン剤処理群ではオフロンキサシンの7が最高で、他は2〜6の間にあり、統計学的に有意差はみられなかった。また、見られた異常はギャップとブレイクが主でII動原体が1例あり、他の異常はなかった。 3、4μg/mlのニューキノロン剤及び1μg/mlのブロモデオキシウリジンを含む増殖培養液でHSG細胞を60時間培養し、姉妹染色分体交換の誘発率を算定した。その結果、姉妹染色分体交換の誘発率は末処理対照の0.18±0.05に対し、ニューキノロン剤処理群では0.17〜0.23の範囲にあり、統計学的に有意差は見られなかった。
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