口唇筋皮弁モデルとしてAbbe筋皮弁を用い、筋皮弁基部、中央部、先端部に分けて周辺健常組織との皮膚温度差を経時的に測定した。 サーモグラフィーによる測定では、皮膚形成後3日目で皮膚温度は低値を示した。さらに、皮膚切離後2日目で低値を示した。特に、皮弁の基部および先端部では形成術後4日から5日で周囲健常組織に比べると1.0〜2.0℃程度の皮膚温度の低下を示した。皮弁切離後2日目の皮弁基部および中央部の皮膚温度は周囲健常組織よりも1.0〜3.7℃程低下した。 しかし、サーモグラフィーによる皮膚温度の変化が筋皮弁の血流動態を十分に表現しているかは疑問である。血流動態を直接測定する方法として、レーザードップラー血流計を用い皮弁血流量を測定する方法がある。LASERLO製レーザードップラー血流計を用い、皮弁血流量の経時的変化を測定した。 皮弁形成後、皮弁全域に一時血流量の減少が認められたが、その後血流量は次第に増加し、切離前には周囲健常組織と同程度の血流量を示した。皮弁切離により2日目には皮弁血流量の減少が認められたが、切離後3日〜5日で周囲健常組織と同程度の血流量を示した。 これらの結果は、臨床経過ともよく一致していた。したがって、サーモグラフィーおよびレーザードップラー血流計による検査は、Abbe皮弁のような小さな皮弁の血流動態測定にも有用であることが証明された。
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