口腔粘膜癌1次症例50例の生検組織を用いた免疫組織学的検索においてラミニンとTリンパ球の染色態度から1、癌胞巣の全周にラミニンの陽性反応が認められ、Tリンパ球の胞巣内浸潤が認められない症例、2、癌胞巣周囲にラミニンの断裂が認められ、Tリンパ球の胞巣内浸潤を伴う症例、3、癌胞巣周囲にラミニンの断裂か又は欠落を認め、Tリンパ球浸潤を伴わない症例の3群に分類した。術前免疫化学療法(CDDP80mg静注、BLM45mg静注、OK-432、5〜7K.E.筋注)による腫瘍縮小効果は1群;50.0±24.0%、2群;66.5±21.9%、3群;33.2±28.3%と、免疫化学療法の効果発現には癌増殖局所でのTリンパ球の癌胞巣内浸潤が強く関与する傾向を示した。一方、患者の予後を左右すると考えられる領域リンパ節転移についてみると、T1、2の比較的早期の癌では1群;13例中0、2群;7例中0、3群;10例中3例であり、3群にのみ頸部リンパ節転移が認められ、T3、4のの進展癌においても、2群;10例中6例、3群;11例中10例と3群の転移頻度が高い傾向を示した。以上の結果はラミニンの局在とTリンパ球浸潤が免疫化学療法の効果発現と予後に強く関与することを示唆する所見と考えられた。また、頸部リンパ節部清術を施行した7例(pN+;4例、pN-;3例)の末梢血リンパ球(PBL)リンパ節リンパ球(LNL)をeffectorとしてcgtotoxicity assayを行った実験において、pN+例ではpercent cytotoxioity Oの1例を除きLNLの方がPBLよりも活性が高く、逆に、pN-例では全例PBLの方が高い結果であった。さらに、1例のみ癌転移のあるリンパ節のLNLを用いて検索しえたが、そのpercent cytotoxicityは全実験中最も高い活性(43%)を示したことから、自己の癌に対して抵抗性を示す感受性細胞は癌増殖局所に存在し、作用を発現している可能性が示唆される結果であった。
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