研究概要 |
1,顎関節モデル作成 下顎運動を簡略化して下顎頭のあらゆる位置を再現するため、最大開閉口運動の範囲内での片側顎関節の矢状面内2次元運動を仮定した。上下顎骨と関節円板は剛体とし、円と直線の組み合わせで形状を近似した。稼動要素として咀嚼筋を、受動要素として3つの靭帯と円板後部組織、口腔周囲の皮膚粘膜の張力および下顎後部の運動抵抗をモデル化した。筋肉、靭帯等の受動要素はいずれも骨または関節円板に点付着し、力の作用方向は付着点を結ぶ方向とした。筋肉と受動要素の付着位置、自然長、筋力、断面積、ばね定数などは文献値を参照した。筋肉は原則として収縮要素のみ考慮したが、咬筋、側頭筋は収縮要素と弾性要素を設けた。咬筋と側頭筋は同期して活動し、顎二腹筋前腹に拮抗するものとした。関節円板と下顎頭の付着線維は前後方向の動きには無視し得る程度であるため受動要素には含めなかった。 2,数学モデルのシミュレーション手順 本モデルは開口角度を与えることによりすべての筋力、受動要素力および関節反力を計算し、筋力の総和が最小となるように上顎に対する下顎と関節円板の位置を設定するように作成した。最初に開口角度0度の下顎の位置を咬合位の初期X座標値として関節円板の位置を探索した。以降、下記の要領で開口角を変化させて下顎と関節円板の位置を探索した。まず、下顎開口角および下顎と関節円板の初期位置を元として受動要素力を計算する。次に生体内力のつり合いから筋力と関節反力を求める。さらに円板位置を0.02mm変化させて同様の順序で計算を行い、筋力の総和が最小となる位置を探索する。つづいて下顎位置を0.2mm変化させ、同様の判定基準で関節円板と下顎のつり合い位置を定める。以上を一回の計算とし、開口運動は開口角を3度づつ30度まで変えて計算し、さらに閉口運動は30度から3度づつ角度を変え0度まで計算する。
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