研究概要 |
顎関節条件の変化による円板動態の解析:前年度までに作成した顎関節モデル上で、従来から円板転位の原因として挙げられてきた諸説をもとにパラメーターを変化させてシミュレーションを行い、円板動態を検討した。パラメーターの単独変化では、1、円板挙動の変化を認めなかったもの(円板後部結合線維を切断した場合)、2、最大開口位付近で円板挙動に変化を認めたもの((1)上下間接面の摩擦係数を変化させた場合、(2)外側靭帯後方垂直線維束を延長させ場合)、3、咬合位付近で円板挙動に変化を認めたもの((1)外側靭帯前方垂直線維束の物性値の変化、(2)関節円板の形状の変化、(3)関節結節と下顎頭の形状の変化、(4)咬合位の後方への変化、(5)下顎頭の回転と滑走の様式の変化)、以上の結果が得られた。次にパラメーターを複合変化させてシミャレーションを行った結果、(1)上関節面の摩擦係数増加+関節円板後部の厚みの減少、(2)上関節面の摩擦係数の増加+関節結節の変化、(3)関節結節の変化+外側靭帯後方垂直線維束の延長、では円板転移を引き起こすことはなかった。しかし、(4)外側靭帯前方垂直線維束の延長+外側靭帯後方垂直線維束の延長,(5)関節円板後部の厚みの減少+上下顎関節面の変化、では円板の転移を引き起こした。これらの結果から、単一の条件変化では円板転位を生ずるものはなかったが、円板挙動の変化を引き起こすものが多く、最大開口付近と咬合位付近で生ずる場合の二通りがあった.上下関節面の空隙の増加を助長する条件では咬合位付近で円板挙動に変化が生じ、前後的運動に影響する条件では最大開口付近で変化が生じていた。関節構成要素の複合変化を組み合わせると円板挙動はより不安定になる。ことに咬合位における下顎窩-下顎頭間隙の増大もしくは円板後方肥厚部の菲薄化を生じせしめる関節構成要素,運動様式の変化によって関節円板前方転移は比較的容易に起こり得る事が推定された。
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