研究分担者 |
中川 仁志 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (10217680)
小飼 英紀 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (60205359)
NAKAGAWA Hitoshi Keio University School of medecine, Instructor (10217680)
NAKAGAWA Hitoshi Keio University School of medecine, Instructor (10217680)
KOGAI Hideki Keio University School of medecine, Instructor (60205359)
NAKAGAWA Hitoshi Keio University School of medecine, Instructor (10217680)
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研究概要 |
顎関節円板転位のメカニズムを検討するため、顎関節の数学モデルを作製し、顎関節構成要素の条件を変化させてシミュレーションを行い、関節円板転位を引き起こしうる要因を究明した。 1,顎関節モデル作成 下顎運動を簡略化して下顎頭のあらゆる位置を再現するため、最大開閉口運動の範囲内での片側顎関節の矢状面内2次元運動を仮定した。上下顎骨と関節円板は剛体とし、円と直線の組み合わせで形状を近似した。稼働要素として咀嚼筋を、受動要素として3つの靭帯と円板後部組織、口腔周囲の皮膚粘膜の張力および下顎後部の運動抵抗をモデル化した。筋肉、靭帯等の受動要素はいずれも骨または関節円板に点付着し、力の作用方向は付着点を結ぶ方向とした。 2,数学モデルのシミュレーション手順 本モデルは開口角度を与えることによりすべての筋力、受動要素力および関節反力を計算し、生体内力のつり合いから筋力と関節反力を求め、筋力の総和が最小となる関節円板と下顎のつり合い位置を定める。開口運動は開口角を0度から30度まで計算した。 3,モデルの妥当性の評価 (1)顎関節腔造影による円板動態所見と比較、(2)非接触顎運動計測システムによる健常例の最大開閉口運動と比較、 (3)健常例の筋電計測値と比較により、作成された顎関節数学モデルは関節円板転位のメカニズムの究明に適したものであることが明らかにされた。 4,顎関節条件の変化による円板動態の解析 顎関節モデル上で、パラメーターを変化させてシミュレーションを行い、円板動態を検討した。その結果、単一の条件変化では円板転位を生ずるものはなかった。上下関節面の空隙の増加を助長する条件では咬合位付近で円板挙動に変化が生じ、前後的運動に影響する条件では最大開口位付近で変化が生じていた。関節構成要素の複合変化を組み合わせると円板挙動はより不安定になる。ことに咬合位における下顎窩・下顎頭間隙の増大もしくは円板後方肥厚部の菲薄化を生じせしめる関節構成要素、運動様式の変化によって関節円板前方転位は比較的容易に起こり得る事が推定された。
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