研究概要 |
平成4年度に行った本研究の結果,ヨウソ系造影剤でのOne-shot dual energy subtractionの最適条件の管電圧は50KVpであり、一般に臨床で用いられるような高管電圧(70KVp〜100KVp)では骨を消去したヨウソ系造影剤のsubtractionイメージを得ることは不可能であることがわかった。そして、これらの研究の結果から、高管電圧でsubtraction可能な条件を求めるには造影剤に含まれる元素の原子番号をより高いものを利用する必要があるということが考えられた。そこで造影剤の原子番号のX線に対する透過性を検討するため原子番号17の塩素から、92のウランまで、できるだけむらなく計34元素について、X線の透過率を調べた。実験方法は、この34元素を含む水に可溶な化合物で、しかも、他の元素に防害されない化合物を選択した。これらはほとんど硝酸塩またはアンモニウム塩の形態のものを実験に用いた。そしてこれらの化合物の1モル/lと2モル/lの水溶液をつくり、50KVp〜100KVpの電圧で、マルチウェルプレート中に入れたこれらの水溶液を0.8mm銅フィルターをはさんで2枚のIP(St-III)に撮影した。撮影したIPはCR-7000にて処理し、各溶液とバックグラウンドとして、被写体のないところと補正のため水のみを入れた部分のデジタル値を求め、これらの値から各元素のX線吸収率を求めた、原子番号とX線吸収率の関係は当初の予想に反して、原子番号の増加とX線吸収率は必ずしも正の相関を示さず,原子番号の増加に反して、各管電圧においても吸収率が減少する領域が認められた。そしてこの領域は、管電圧が上昇するに従い、高原子番号側にシフトし、またフィルター透過により高原子番号に移動した。そしてフィルター透過することにより吸収率の変動幅は大きい値を示した。この結果、フィルター透過前後のIPにおいて吸収率の逆転する領域があることがわかった。そしてこの逆転している領域は管電圧が上昇するほど高原子番号側にシフトし、逆転幅は小さくなっていった。この逆転がsubtractionに有効に作用するものではないかと考えられたので、フィルター透過前後の吸収率を比を求めたところ、逆転領域とほぼ一致したところに、ピークが表われた。このピークの部分の原子番号を有する元素が、その管電圧のsubtractionにおける最適条件となる元素であると考えられる。これらの元素は50KVpにおいてはヨウ素,70KVpにおいてはネオシム,100KVpにおいてはテルビウムであり、特に50KVpでのヨウ素は前回の結果と一致した。また、イメージにおいてもほぼこれを確認することができた。
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