研究概要 |
平成5年度に本研究の結果より得られた造影剤の最適原子番号が50kVにおいてはヨウ素、70kVにおいてはネオジム、100kVにおいてはテルビウムであることがX線吸収率変化とその逆転現象から予想された。そこで今回はこれらの結果をもとに、さらに詳細な原子番号と管電圧の関係をもとめ、実際にone-shot dual energy subtractionを行い、確認した。元素では逆転現象領域の原子番号49から68までを利用可能なもの全てについて測定した。これらの元素はインジウム(In,Z=49)、アンチモン(Sb,Z=51)、ヨウ素(I,Z=53)、セシウム(Cs,Z=55)、バリウム(Ba,Z=56)、ランタン(La,Z=57)、セリウム(Ce,Z=58)、プラセオジム(Pr,Z=59)、ネオジム(Nd,Z=60)、サマリウム(Sm,Z=62)、ユーロピウム(Eu,Z=63)、ガドリニウム(Gd,Z=64)、テルビウム(Tb,Z=65)、ジスプロシウム(Dy,Z=66)、ホルミウム(Ho,Z=67)、エルビウム(Er,Z=68)の16元素であり、管電圧については50kVから150kVまで行った。そしてこれらのデジタル値から骨との画像分離度を求め、SI値(separation index)とし、管電圧および原子番号と比較した。また各元素の4段階ステップファントームのサブトラクション像と臨床を仮定した頭部ファントームに各原子番号の造影剤2M溶液を封入したチューブを頚椎に重なるように固定したもので実際のサブトラクションイメージを撮った。 これらの実験の結果から最適原子番号は管電圧の上昇に伴い増加することがわかった。この値は全ての元素と管電圧について行い、前回のX線吸収率から求めた値とほぼ一致した。そして、高管電圧においてはより大きい原子番号の造影剤が最適となるが、分離度自体は低下する傾向がみられ、線量比が、フィルター透過前後で小さくなるためイメージの画質は良くなった。また頭部ファントームの実験においては、ステップファントームと異なり最適元素はより大きい方にシフトする傾向が認められた。また管電圧が100kV以上では最適元素の原子番号の変化は小さくなった。本実験から臨床応用を考えた場合、造影剤として適した元素は原子番号65番前後のTb,Gd,Dyが、銅フィルターを試用した場合には有効であることが示唆された。
|