歯の表面よりレーザー光線(半導体レーザー780nm波長)を照射して生じるレーザードップラー効果を利用して、歯髄血流の有無を検知し、歯髄の生死を判定できることを目的として本研究を行なった。 1.医科領域で実際に使用されているレーザー式組織血流計(バイオメディカルサイエンス社製LBFIII、購入機器)は、主として皮膚表面より組織の血流量および血液量を計測する機種であるが、これを歯に使用しても操作性が簡便で低出力(1mW)なため安全性もきわめて高いことが認められた。 2.歯の表面にあてるプローベを数種類設計、試作し被験者の歯で試適してみたが、現有する電気歯髄診断器(自作)のものとほぼ同型のコントラアングル式(直径2mm、長径20mm、)が最適であることがわかった。 3.歯との接触点での手ブレがテーターに影響するため、シリコン印象材で保定するとより正確な計測ができる。 4.得られた信号をデーターレコーダーに記録し再生して観察したが、SN比が大きく、また、計測された電位が安定するまでに5-10分位要するため、実際の臨床での使用には現段階では難しいと思われた。 5.抜去乳歯を矢状面で切断し、光量計で歯質の厚さとレーザー光の減衰率を調べたところ、歯質2mmでは17%に、1.5mmでは36%に、1.0mmでは45%に減衰することがわかった。 6.通常の組織でドップラー効果を観察するに必要なレーザー光の光量は1mWであるが本実験より得られた結果を考慮すると、歯質を通過したレーザー光が少なくとも1mW以上あるための条件としては、入射光の出力が5mW以上であることが必須であり、今後、半導体レーザーに特有な性質として出力が可変であることに注目し、機種を改良して計測に最適の出力を決定していく予定である。
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