本年度は、下顎頭軟骨培養細胞の分化形質について、以下のような主に形態学的な実験結果が得られた。 光顕所見:下顎頭軟骨細胞は培養6日目では、偏平な細胞形態をとっているが、培養10日目では軟骨細胞に特有な円形の形態へと変化した。その後、細胞は軟骨基質を大量に分泌して、培養16日以降で肥大化が見られた。AB染色では、培養は13日まで経時的に染色性が亢進したが、その後、染色性は低下した。培養34日で、また染色性が亢進した。AR染色では、培養16日から経時的に染色性が亢進し、培養27日以降では、ほとんどの細胞基質が赤く濃染色された。 電顕所見:培養1週間では細胞周囲腔に多量のI型コラーゲン繊維を認める一方、領域間基質としてII型コラーゲンを有する細胞を認めた。培養2週間では初期石灰化像が観察された。培養4週間までの観察では、細胞の肥大化が認められたが、全培養期間を通じて典型的な軟骨細胞の形態を呈していた。 ALPase活性:FGF存在下で培養すると、ALPase活性は低い値のままであった。コンフルエントに達した培養5日目に、培地からFGFを除くとALP活性は上昇した。その後、ALPase活性は培養15日で最大になり以後減少した。 ノーザンブロット法:I型コラーゲンmRNAの発現は培養と共に上昇して12日目に最大となった。II型コラーゲンとALPaseのmRNAの発現は培養7日目で最大を示し、以後減少した。X型コラーゲン、osteopontin、osteocalcinの発現は、培養期間中には認められなかった。
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