研究概要 |
1.歯と機械インピーダンス測定装置臨床応用のための基礎的データの収集蓄積 従来の歯と機械インピーダンス測定装置を応用して矯正治療中の患者の歯周組織性状の変化を追跡研究し,その臨床応用のための基礎的データの収集蓄積につとめた。 2.歯周組織性状変化の把握性能向上のために・・・(より高性能な歯と歯周組織の機械インピーダンス測定装置の新開発) さらに機械インピーダンスをより高くかつ広範な周波数領域まで観測,測定するため,従来の機械インピーダンス測定装置に大幅な改良を加えた。この新開発の測定装置ではデータ解析をより明解なものとするため,歯と歯周組織の近似モデルを弾性要素,粘性要素,質量要素の3つからなるいわゆる1自由度粘性減衰モデル(単一共振モデル)とした。これによって歯周組織の振動応答分析をより明解かつ簡便に行うことが可能となった。 新開発の測定装置の基本性能を検討する目的で,上下顎中切歯の測定(30秒間隔で20回)を試行した。測定結果から弾性係数,粘性係数,実効質量の3つの値は同一歯においては試行回数に関係なくほぼ一定の値を示した。これによって測定のために歯に連続的に20回の振動を加えても,歯周組織に測定上問題となるような影響を及ぼさないことが分かった。同一歯の測定でみられた弾性係数,粘性係数,実効質量を表す数値のばらつきは小さく,著者らが使用した従来型の測定装置と比較して遜色ない性能が認められた。また歯種による差異については上顎中切歯と下顎中切歯との間ではその測定値に有意の差が認められ,これらの歯の間にみられる質量の差や歯根長の違いなどが測定結果に影響を与えることが示唆された。 以上新開発の測定装置はヒトのみならず動物実験などの特殊な目的にも広く応用できるもので,歯の動揺度測定法の臨床応用確立のための基礎研究の有力な方法を提供するものである。
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