齲蝕原性連鎖球菌の迅速で簡便な同定手法の研究開発

1992 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 04671266
• 研究機関: 徳島大学
• 研究代表者: 弘田 克彦 徳島大学, 歯学部, 助手 (60199130)
• 研究分担者: 小野 恒子 徳島大学, 歯学部, 講師 (40035514) ; 太田 房雄 徳島大学, 歯学部, 教授 (90035478) ; 福井 公明 徳島大学, 歯学部, 教授 (40035407)
• キーワード: ミュータンスレンサ球菌 / モノクロン抗体 / EIA / 迅速簡便同定法 / 齲蝕活動性

研究概要

ミュータンスレンサ球菌を含めた口腔内に存在する種々の標準菌株との反応性を検討した結果、MAba‐21,MAb b3‐22,MAb f‐89,MAb s3‐9,MAb h‐448がそれぞれS.cricetus(a血清型)、S.rattus(b血清型)、S.mutans(c,eおよびf血清型)、S.mutans(e血清型)、S.sobrinus(d,g血清型)の同定試薬として使用可能であることが示唆された。徳島大学歯学部学生の歯垢中より得たミュータンスレンサ球菌と考えられた分離菌株、前述の5種類のモノクロン抗体を使用した酵素免疫測定法と、ミティスサリバリウス寒天培地上で培養した後に、種々の糖類の分解性試験、バシトラシン感受性、菌体外多糖体産生能、溶血性、発育能、グラム染色性等により総合的に調べた結果を比較すると分離菌株の同定には、結果の判定の安定性、迅速性および簡便性のすべての点において、菌種特異性を有するモノクロン抗体を使用したEIAによる同定法が、後者の従来法に比べて優れていることが示唆された。
本年度実施計画はほぼ100%達成されたが、調査していない菌種あるいは菌株の中には、同一のあるいは類似したエピトープの存在によりこれらのモノクロン抗体と反応することも予測できる。また例えばS.mutansの中にも血清学的亜形が存在し、今回使用したモノクロン抗体とは反応しないことも考えられる。
現在上記以外の数種のモノクロン抗体を作製し、これら加えたEIAの結果と、発酵試験、分解性試験等の総合判定により同定した結果とを、次年度の計画であるDNA‐DNAハイブリダイゼーションによる遺伝学的方法により同定した結果と比較検討する準備を進めている。本年度および次年度の結果より、煩雑な同定操作を必要としない迅速で簡便な齲蝕原因菌に対する新しい同定法の確立が期待される。

研究成果

• [文献書誌] 弘田 克彦, 他: "モノクロン抗体を使用した酵素免疫測定法によるミュータンスレンサ球菌の迅速簡便同定法" 四国歯学会雑誌. 5. 65-74 (1992)
• [文献書誌] Hirota, K., et al.: "A comparison of various ElA plates for the analysis of polysaccharide antigens and serological identification of oral streptococci" New perspectives on streptococci and streptococcal infections(ed, by Orefici, G.). Gustav Fischer Verlag,Stuttgart. Suppl.22. 116-118 (1992)
• [文献書誌] Giovanna Batoni et al.: "Epidemiological survey of Streptococcus mutans in a group of adult patients living in Pisa (Italy)" European Journal of Epidemiology. 8. 238-242 (1992)
• [文献書誌] 弘田 克彦,: "モノクロン抗体f-77によるStreptococcus mutansおよび Streptococcus pyogenesの菌体表層抗原の免疫学的解析" 四国医学雑誌. 49. 8-15 (1993)
• [文献書誌] Hirota,k., et al.: "Streptococcus mutans has a polysaccharide antigenic determinant in common with Streptococcus porcinus" New perspectives on streptococci and streptococcal infections(ed,by Totolian,A). St.Petersburg,Russia. (1993)
• [文献書誌] Hirota, K., et al.: "A cross‐reactive polysaccharide antigen between Streptococcus mutans and Streptococcus pyogenes" New perspectives on streptococci and streptococcal infections(ed, by Totolian, A). St.Petersburg,Russia. (1993)