研究概要 |
本研究の実績を交付申請書の実施計画に対応させて以下に要約する。 1.新規なキラル複素環として2位にメンチルオキシカルボニル基をもつ1,3-ジオキシン-4-オン誘導体(1,2)及び1,3-オキサジン-4,6-ジオン誘導体(3)の合成法を確立した。この際メンチルオキシカルボニル基は1-3の光学活性体を提供するのみならず、可能な二つの配座を一方に固定するためにも有効であった。すなわち、環内ヘテロ原子孤立電子対とσ^*_<C-CO2R>との相互作用による立体電子効果により1-3の安定配座をとる。一方、2-モノ置換体では1'型の配座をとるが、この事実より2位の置換基の嵩高さによっても配座制御が可能なことが実証された。化合物1-3のエノン部はいずれも各種の付加反応において完全なα面選択性を示し、医薬品等の合成中間体として有用なキラル素子の効率的合成法を提供する。 2.酵素化学的手法により4の不斉合成法を開発した。4は1型化合物の効率的合成法を提供するのみならず、5の分子内反応を経るキラルシクロブタノール体(6)の選択的合成法を提供する。 3.キラルマロン酸エステル体(7)とシクロペンタジエンとのDiels-Alder反応における立体化学を超高圧により制御することに成功した。この付加体8を用いて抗ウイルス活性が期待される炭素環C-ヌクレオシド類(9)の不斉合成法を開発した。
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