研究概要 |
前年度に行ったキハツタケ、ウチワタケからの免疫抑制活性成分の単離に引き続き、本年度は、先に行った系統的検索で有意な免疫抑制活性が示されたコツブタケPisolithus tinctorius、カイガラタケLenzites betulinaについて、マイトゲン刺激マウス脾リンパ球増殖(幼若化)に対する抑制活性を指標に、菌体抽出エキスを分画し、活性本体の単離、化学構造の解明、及び活性発現に必要な構造要因の検討を行った。 コツブタケからの活性成分は5種で、PT-1、-2、-3、-4、-5と仮称され、それぞれの性状とスペクトルデータの詳細な検討が行われた。その結果、、PT-1、-2は以前に同菌より得られていた24-methyllanosta-8,24(28)-diene-3β,22ξ-diolとpisolactone〔(22S)-24-methyllanosta-8-en-22,28-epoxy-3β-ol-28-one]にそれぞれ一致すると推定された。PT-3はpisolactoneに関連した構造を有する2種の互いに異性体関係にある新化合物(22S,24R)-24-methyllanosta-8-en-22,28-epoxy-3β,28α-diolと(22S,24S)-24-methyllanosta-8-en-22,28-epoxy-3β,28β-diolの混合物であると推定された。又、PT-4、-5はカイガラタケから単離された活性成分に一致し、これらはそれぞれ前年度にウチワタケから単離されていたergosterol peroxide、9(11)-dehydroergosterol peroxideであると同定された。これらの5種の成分中、ergosterol peroxideは近年、担子菌Tricholoma populinumから免疫抑制活性成分としての単離が報告されているが、その他の4種の成分は今回初めて免疫抑制活性成分として得られたものである。これら5種の成分について誘導体を作成して活性を比較する等の方法により、新しい免疫抑制剤の開発のための先導化合物としての利用を考慮し、活性発現に必要な構造要因について検討を行った。
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