研究概要 |
発癌プロモーターであるテレオシジン類は溶液中で2つの立体配座が安定に存在し,その相互変換は速い。したがって,フォルボールエステル類等,他の同じレセプターに結合するプロモーターとの構造上の共通性を明らかにする上で大きな問題であった。その最後的な解決策として,2つの配座にそれぞれ固定した化合物を合成し,生物活性を評価することを1つの目的とした。テレオシジン類の2つの立体配座はそれぞれ9員環上のアミド結合がシスとトランスに配置されている。このシス-トランスの変換を制限するため,以前の本研究者の構進活性相関の結果も踏まえ,テレオシジンのインドール環をベンゼン環に単純化した8員環9員環,10員環ラクタムを有する類緑体(ベンゾラクタム類)を合成した。立体配座は8員環でシス-プミド結合,9員環でトランスーアミド結合を有するテレオシジンの2つの配座に対応する構造にそれぞれ固定されたことを核磁気共鳴スペクトルにより確認した。活性は8員環を有するベンゾラクタムのみがテレオシジン類に近い強さを示し,テレオシジのTWIST型の立体構造が,活性に寄与していることを証明した。一方,フォルボールエステル類のプローターの置換基をステロイド骨格上に適正に配置することによってデザインした酸化型のコレステロール誘導体は合成が完了し,その生物活性の検討を行った。プロモーターの作用発現の一次的なレセプターとされているプロテインキナーゼCに対する結合は無かったが,TPAタイプのプロモーターが共通に結合するCN-TPBPと呼ばれる蛋白に対する特異的な結合を示すステロイドを発見した。この結果は,内在性のプロモーターの発見あるいは新しい生理活性ステロイドの発見にと続がる一歩となりうる。
|