研究概要 |
本研究はフォルボールエステル類、テレオシジン類の同一レセプターに作用する発癌プロモーターの構造から化学計算の結果を考慮しつつ、合成化学的手法をもって、活性発現に必要な共通構造性を明らかにし、さらに新規骨格のプロモーター、特異的な細胞内情報伝達系作用物質を見出すことを目的としている。第一にテレオシジンの活性立体配座の決定を試みた。テレオシジンは溶液中で、2つの立体配座twist型,sofa型で存在し、これがプロモーターの共通構造を発見するうえで障害となっていた。平成4年度に、テレオシジンのインドール骨格をベンゼン環に単純化した8員環、9員環、10員環のラクタム類を合成、立体配座解析を行ない、8員環ではtwist型、9、10員環ではsofa型で存在していることを明らかにしたが、これらの化合物が疎水性部分を欠損していたために、明確な生物活性の結果が得られなかった。本年度において研究計画調書のとうり、ベンゼン環部に炭素数10の直鎖アルキル基を導入した8員環(benzolactam-V8-310)、9員環ラクタム(benzolactam-V9-310)を合成し、活性試験を行なった。。8員環化合物にテレオシジンに近い活性を見出し、9員環は活性が無かった。この結果から、テレオシジンの活性立体配座はtwist型に近いことが初めて明らかになった。また、benzolactam-V8-310は新しい骨格の活性化合物であり、プロモーターおよび細胞内情報伝達系の研究に役立つものと考えられる。また、フォルボールエステルの極性官能基をステロイド骨格上に配置した化合物のデザイン、合成を行ない、その一つ酸化コレステロールがフォルボールエステルが特異的に結合するタンパク(CN-TPBP)に強い親和性をもつことを明らかにした。この結果は酸化型コレステロールの新しい作用発見に繋がるものと考えている。
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