研究概要 |
生薬の品質を判断するための基礎的研究として,古い方が賞用される薬物「大黄」及び「センブリ」について,加工調製法の違いによる色彩及び含有成分の変化を検討した. 実験方法:市販の生薬及び新鮮な原材料を入手し,保存方法や乾燥方法の条件を種々変化させて調製した試料について,色彩の変化並びに各生薬に特徴的な化学成分の変化を定量的に求めた.保存方法に関しては,恒温恒湿器(新規購入)を用いた高温高湿,高温低湿,低温高湿,低温低湿などの各条件の他,凍結,冷凍,明・暗所,脱酸素,その他を行った.調製方法に関しては,曝干,陰干,加熱乾燥,凍結乾燥などを行った.色測定には色彩計を用い,L^*a^*b^*表色系で表現した.化学成分の定量は高速液体クロマトグラフを用い,大黄については主に瀉下成分のセンノサイド類を,センブリについては苦味成分のスウェルチアマリンを測定した. 結果および考察:大黄に関しては,瀉下活性を高く保持するには低湿度の条件で原形のまま保存するのがよく,高湿条件下では微生物が発生しセンノサイド類が著しく減少することなどを明らかにした.センブリに関しては,苦味成分の効能を期待する場合には,低湿度のもと暗所で空気にさらして保存するのがよいことを明らかにした.従来センブリは1年以上放置されて色あせたものが良品であるとされてきたが,これは放置により細胞壁が空気酸化による損傷を受け,含有成分の抽出が容易になるためと考えられる.すなわち退色の程度はその損傷の程度を示す指標であり,その程度が色彩計によりa^*b^*値で判断できることを本研究で明らかにした.従来,生薬の品質保持のために適していると考えられてきた凍結状態や脱酸素状態の保存は,センブリにとっては不適当であると結論された.今後は長期に渡って年単位の変化を検討する必要がある.
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