エイズ等の抗ウイルス、抗癌に対して効果的な手段として注目を集めているアンチセンスアプローチに有効な特異的かつ選択的活性を持つ機能性アンチセンスオリゴマーの合成とその性質に関する化学的研究を行い以下の幾つかの有用な知見と結果を得た。 1・機能性分子として興味ある酸化還元能をもつビオローゲン誘導体とDNAとの反応を検討したところ環状類縁体であるジアザピレン誘導体は極めて低濃度でも光照射下DNA切断活性があることが判明した。 2・ビオローゲン誘導体がリン酸バックボーン部ヘアミデート結合の形で共有結合した数種の核酸オリゴマーの合成に成功し、各種スペクトルデータや分析手法、酵素反応等によりそれらの構造の確認を行った。 3・合成オリゴマーの2重螺旋形成能を調べたところジアザピレン分子の導入は著しい安定化の寄与をもたらした。これはジアザピレンのインターカレーターとしての機能がはたらいていると考えられる。 4・修飾部位では予想通り耐エキソヌクレアーゼ活性が認められた。 5・グルコピラノースを糖部としたヌクレオシドやニトロソ尿素誘導体及びそのジスタマイシン混成体を合成しDNAとの反応を調べたところ後者二者はグアニン塩基のところを選択的にアルキル化した。 6・ジアザピレン修飾核酸オリゴマーの相補的塩基配列をもつ核酸オリゴマーの光切断反応を検討した結果、本品は塩基並びに位置選択的切断活性を持ち、優れた機能性アンチセンス分子であることが判明した。 7・ビオローゲン修飾オリゴマーの切断活性は弱いものであったが、興味あることにビオローゲン分子はジアザピレンとは異なった位置と様式でDNA分子を切断することが観測された。 8・上記の切断反応のメカニズムの考察を種々行ったが、詳細については現在なお検討中であり今後の課題として残った。
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