研究概要 |
昨年,シキミ科(Illiciaceae)植物のchemotaxonomy的考察を加える中で野八角(Illicium simonsii)よりsesquineolignanの1種であるsimonsinolを単離し,新たなtriphenylneolignanの存在を示した.simonsinolのC環はpropenyl基に対してortho位にphenol基を持ち,紅八角(Illicium macranthum)から得られたmacrantholや南川八角(Illicium dunnianum)から得られたdunnianolとも異なった置換様式を持つ.今年度は更に酢酸エチル可溶部,ブタノール可溶部等極性部を検索した.その結果,興味有ることに少量ではあるが酢酸エチル可溶部からはanisatin型sesquiterpene(4)(これはanisatinよりも毒性が高いことが分かっている)が得られ,一般に有毒植物とは考えられていなかった野八角にも有毒成分が存在することが分かった.酢酸エチル可溶部からは他に述べるべき化合物は得られなかったが,ブタノール可溶部からは次の様なneolignan類が得られた.(2),(3)の化合物は他にも見られる物であるが,(3)は地楓皮(Illicium difengpi)からも得られたglycerophenylpropanoidに属する化合物であった.実際,(3)のglucose部分にcaffeic acidが付加したものは既に地楓皮からも得られていた.従って,グリセロール縮合型フェニルプロパノイドの存在はシキミ科にかなり特有のものと言える.以上の結果,シキミ科に特有の成分としてanisatin,majucin 型 sesquiterpeneやphytoquinoid,triphenyleolignan,glycelophenylpropanoidあるいはglyceroneolignanの存在が示された.
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