研究概要 |
前年度より引き続き藍藻中の抗酸化成分,抗発癌プロモーション活性成分の探索を行なった.その結果、不飽和度の高いアシル基を持つジガラクトシルジアシルグリセロール(DGDG)がin vitroだけでなくin vivoでも抗発癌プロモーション活性を発現することが明かとなった.またアシル組成と抗発癌プロモーション活性との相関を調べるため,化学合成によりまずモノガラクトシルジアシルグリセロール(MGDG)から合成を開始し活性を検討した結果,特にオレオイル基を有するMGDGは,我々が天然界から単離したMGDG,DGDGよりも遙に活性が強く,毒性が少ないことがわかった.この他,藍藻スピルリナ属より抗発癌プロモーション活性成分として,スルホキノボシルグリセロールのモノアシル体を単離した.また抗酸化成分としては既知ではあるが,クロロフィル誘導体数種の構造を決定した. 硫糖脂質のうち,分枝飽和アシル基を持つ新規の化合物を緑藻クロレラ属から単離し昨年度報告したが,MGDGやDGDGの中にも同様なアシル基を持つ新規化合物の存在が明らかとなった. 昨年度までに微細藻類より単離した糖脂質,硫酸脂質類のアシル基とその結合位置を決定する手段としてsn-1位特異的脱アシル化反応を報告してきたが,リン脂質にも同様の反応を応用し,天然のリン脂質の構造決定の武器となる,安価なリパーゼによる酵素的sn-1位特異的脱アシル化反応を開発した.一方,糖脂質類の酵素的合成法の開発を目的としてリパーゼによるアシル化反応を行なった結果,モノガラクトシルグリセロールのsn-1位特異的アシル化に成功した.
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