研究概要 |
フッ素イオンによる脱シリル化反応によってアンモニウムイリドおよびスルフォニウムイリドを発生させその反応挙動を調べた.本反応によって従来の強塩基を用いるイリド発生反応では困難であったイリドを発生させ,真のイリドの反応性を知ることが出来る.以下研究結果の概要を述べる. 1.アンモニウムイリドの研究 1-1.フラン,チオフェン,ピロール,インドール,およびピリジン環を置換したトリメチルアンモニウムメチリドの転位を調べた.その結果フラン,チオフェン類からは何れもイリドの[2,3]シグマトロピー転移体(共役ジエン)が選択的に得られた.しかし,ピロールとインドールからはその置換位置によって異なる結果となった.ピリジン類からは通常のSommelet-Hauser転位が高収率で進行した. 1-4.各種の2-phenyl cycloammonium 1-methylide類を発生させてその立体異性体と転位生成物との関連を調べた.その結果,一方の異性体からは[2,3]シグマトロピー転位して3炭素増環した共役トリエン(イソトルエン誘導体)が得られるが,他方の異性体からはStevens体が主成した.これらの転位機構を解明した. 2.スルフォニウムイリドの研究 2-1.ベンジルスルフォニウムアルキリドを非塩基性条件下で発生させその挙動を調べた.その結果,ベンゼン環置換基あるいはイリド炭素の置換基の有無(メチリドあるいはアルキリドの差)を問わずSommelet-Hauser転移体のみが生成した.この結果はN-イリドと比べて興味深い. 2-2.ジアルキルおよびジフェニルスルフォニウムメチリドを非塩基性条件下で発生させその挙動を調べた.その結果,簡単なカルボニル化合物との反応では強塩基を使用する従来方と同等の結果を得たので,フォニウムメチリド反応の適用範囲の拡大が期待できる.
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