エンドウにつく病原菌Mycosphaerella pinodes分生芽胞から分泌される糖タンパクが、エリシター活性を有する点に着目し、新たな分子構造を有するエリシター活性体の最小有効分子構造を合成的に構築することを目的とした。本物質は分子量130万、糖とアミノ酸の比は1:2.8から成る糖蛋白質で糖鎖部分はbeta-D-Glc-(1-6)-alpha-D-Man-(1-6)-alpha-D-Manの三糖より成り、タンパクとセリンを介してO-グリコシド結合をしていることが判明している。活性部位の最小単位を合成面から明らかとするためにモデル化合物の合成を試み三糖セリンbeta-D-Glc-(1-6)-alpha-D-Man-(1-6)-alpha-D-Man-1-3)-L-Ser及び、三糖ジペプチドbeta-D-Glc-(1-6)-alpha-D-Man-(1-6)-alpha-D-Man-(1-3)-L-Ser-L-Proの合成を行った。三糖セリンの合成については、二糖glucosylmannoseのブロマイド体とマンノースセリン誘導体との縮合により得たが、関連化合物合成における将来性を考慮し、後者の化合物の合成に関しては、三糖トリクロロイミデート体とアミノ酸誘導体の縮合により得た。すなわち、三糖glucosylmannosylmannoseのイミデートをBF_3・OEt_2存在下セリルプロリン誘導体と縮合させ目的物を得た。得られた三糖ジペプチドのそれぞれのアミノ基、カルボキシル基を脱保護し、縮合させ、分岐した六糖テトラペプチドの誘導体を得たところである。エリシター活性について、エンドウ葉中のファイトアレキシンであるPisatinの生成量をHPLCにて定量した結果、原体である糖タンパクが1.23mug/cm^2に対し、前者は0.59、後者は0.94mug/cm^2と弱いながらも活性を示した。
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