微生物が有している第2次代謝産物の生合成機能を基盤として、以下の生物活性物質の探索を行った。併せて、放線菌の生産する神経突起伸長作用物質ラクタシスチンの生合成研究を行った。 1.糸状菌由来の新規ポリケチド物質の探索を行った。シリカゲルTLC上のUV吸収を指標とするケミカルスクリーニングにより、既知物質、Radicicol、Kotanin、Terrein、Chrodrimanin Bなどの同定に加え、新規物質ATF-202が単離された。現在、生物活性を検討中である。 2.昆虫のメラニン生合成機能を抑制する糸状菌由来の生物活性物質の探索を展開した。カイコ幼虫体液の黒色化を指標として探索を行った結果、既知抗カビ抗生物質Trichoviridinや新規物質ATF-606が見い出された。Trichoviridinのメラニン生合成阻害活性は初めての知見であり、in vivoでの評価が期待される。 3.微生物変換による新規物質の創製の一環として、放線菌の生産する神経突起伸長作用物質ラクタシスチンの^<13>C標識化合物を用いる生合成研究を行った。その結果、ラクタシスチンはロイシン、イソ酪酸及びシステインより生合成されることを明らかにした。併せて、立体特異的に^<13>Cが標識されたL-ロイシンを初めて生合成研究に適用し、生合成経路の立体化学を解明した。 以上、微生物の中にあってはより多彩な生合成経路を保有している糸状菌の第2次代謝産物に注目し、新規生物活性物質の探索を行い、2種の新規物質を見い出した。併せて、前駆体として^<13>C標識アミノ酸を用いる取り込み様式が立体化学を含めた生合成経路解明に有用な手段であることを立証した。
|