研究概要 |
当該年度は、インターロイキン6(IL-6)のC末端領域に6個存在するLeu残基のVal残基への部位特異変異株を、安定同位体標識を用いたNMR法によって解析し、(1)シグナル帰属を行い、(2)受容体結合領域であるC末端領域近傍の部分的な3次構造を明かにし、(3)変異株のスペクトルを野生株のものと比較して解析することによって、IL-6の構造活性相関を明らかにした。 (1)Leu152,159,166,168,175,182をそれぞれVal残基に置換した変異体を、通常培地またはD-Leu標識培地を用いることによって培養し、作成した。HOHAHA、NOESYスペクトルを測定し、Leu152,168,175のδCH_3プロトンとγCHプロトン間の相関ピーク及び置換体のVal152,159,166,168,175のγCH_3プロトンとβCHプロトン間の相関ピークを帰属した。次に、これらLeu残基及び以前行ったTyr残基の帰属の結果と、4本のヘリックスからなると推定されるIL-6の2次構造予測の結果に基づいて、側鎖間のNOEの結果を解析した。その結果、Leu168あるいはLeu175とのNOEより判断して、Ile167、Phe171、Phe174のシグナルを帰属し、Tyr98あるいはTyr101とのNOEより判断して、Phe95、Val97のシグナルを帰属した。(2)NOESYスペクトルを解析することによって、受容体結合領域である最もC端側のヘリックスDに存在するPhe171とヘリックスBに存在するPhe95間のNOEを観測した。さらに、ヘリックスBに存在するTyr98,101とヘリックスC、D間のループに存在するLeu152間のNOEを観測した。(3)6つのLeu残基の中で、Val残基に変異させた場合、最も受容体結合活性が低下した(野生株の10%)変異体Leu175→ValのNOESYスペクトルを、野生株のNOESYスペクトルと比較し、解析した。Leu175→Valの変異によって、(1)前述したヘリックス間NOEであるPhe171とPhe95間及びTyr98,101とLeu152間のNOEの強度は殆ど変化しなかった。(2)Val175は、Phe171とのNOEの強度が減少したが、Ile167及びヘリックスBのVal97とのNOEの強度が増加した。(3)Ile167とLeu168間のNOEの強度が減少した。
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