研究概要 |
ビタミンDは肝,腎で各々25位,1位に水酸化を受け活性型ビタミンD(1α,25‐ジヒドロキシビタミンD:1,25(OH)_2D)へ代謝される.この活性型ビタミンDは体液中カルシウムのホメオスタシスに関与し,“ホルモン"として極めて重要な働きをなしている. ところで1,25(OH)_2D及びその生合成前駆体である25(OH)D等の血中レベルを的確に把握することは,栄養診断並びにビタミンD代謝異常に伴う各種疾患の診断上有用である.現在,これらの測定は,高速液体クロマトグラフィー(HPLC),competitive protein binding assay(CPBA),radioreceptor assay(RRA)などにより行われている.しかし,いずれの方法も煩雑な前処理を必要とする上に,測定値の変動も大きく信頼性に欠ける.本研究は,新しい発想法に基づく前処理,HPLC及びimmunoassay(radioimmunoassay,enzyme immunoassay)を駆使して感度,選択性に優れる生体内ビタミンD代謝産物分析法を開発せんとするものであるが,平成4年度は以下のような研究成果を挙げた. すなわち,セコステロイドであるビタミンDは光や熱に極めて不安定なトリエン構造を有しており,従来から汎用されているHPLC用誘導体化法は適用しにくい.そこで,この構造を安定化させると共に高感度な応答を示すfluorophoreを配したプレカラム誘導体化試薬(Cookson型試薬)を多数合成し,その中から満足ゆく試薬を得ることに成功した. また,従来のCPBA,RRAに用いられている各種のタンパク質はいずれも特異性に欠け,内因性妨害物質あるいは他の代謝産物を除去するための煩雑な前処理を必要とする.そこで,ステロイドA環及び側鎖より離れた11位に着目し,この位置を介してキャリャータンパク質と結合させたハプテン結合体を調製し,ウサギより対応する抗体を得ることに成功した.さらに,これら抗体の諸性質を,先に調製したC‐3ハプテンよりのそれとの比較の見地より吟味した.
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