私共は膜蛋白質を2段階によって結晶化する方法の開発を目指している。第一は膜蛋白質の2次元結晶を水の表面上に生成した脂質単分子膜を利用して作り、第二はこの2次元結晶か3次元結晶を得る方法で、この結晶化の材料として大腸菌外膜に存在するホスホリパーゼA(DRPLA)を取り上げた。当初、簡単に考えた本酵素の大量精製の問題で、現在大変苦労している。大腸菌のDRPLA過剰産生菌から出発し、フレンチプレスによる破菌、SDS界面活性剤による可溶化、SepharoseQカラムクロマトグラフィーを通してDRPLA粗精製品を得た。これを更に精製するためにDRPLAの抗体カラムを作って精製を試みたところ、本酵素を可溶化するために加えた界面活性剤によってDRPLAの抗体への結合が妨げられることが判明した。本酵素を可溶化し、且つ水相に多くの表面を露出させ、抗体と結合できるような系を求めて各種のバッファー系を調べたところ40%エタノール含有トリス緩衝液、ブタンスルホン酸又はペンタンスルホン酸含有緩衝液においてDRPLAは抗体へ結合した。しかし吸着した蛋白を抗体カラムから溶出して調べたところ、DRPLA以外に2〜3の疎水性蛋白が混入し、抗体カラムによる精製はこれ以上は難しいと考えた。そこで、大型電気泳動精製に切り替えて、DRPLAの精製を開始した。すでに、大型電気泳動装置を使い、大量の試料のSDSPAGEを行い、SDSPAGEゲルからDRPLAのバンドを切り出している。ゲルから本酵素を電気的に回収する装置を工夫して作製しており、これらによってDRPLA精製品を得る予定である。この方法が成功すれば、他の蛋白にも適用でき、簡便な蛋白の大量精製法へつながると考えている。当初計画より大分遅れているがさらに本酵素に2次元、3次元結晶化へと進みたい。
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