本研究は膜蛋白質を結晶化する一般的な方法の開発を目指した。その方法は先ず膜蛋白質の2次元結晶を水の表面上に生成した脂質単分子膜を利用して作ることである。次にこの2次元結晶から3次元結晶を得る。この結晶化の材料として大腸菌外膜に存在するホスホリパーゼAを取り上げた。実験は2段階に分かれ、第一段階では純粋なDRPLAを大量に調製し、第二段階ではDRPLAの2次元および3次元結晶を作製する。20倍の活性をもつ大腸菌のDRPLA過剰産生菌から出発し、Sepharose Qカラムクロマトグラフィーを通してDRPLA粗精製品を予定通り得た。次に抗体カラムクロマトによって一段階でDRPLAを精製しようと試みた。DRPLAに対する家兎の抗血清からIgG画分(ポリクローナル抗体)を精製し、抗体カラムの作製を行った。DRPLAの抗体カラムへの吸着、脱離の実験条件を検討したところ、DRPLAを可溶化するために加える界面活性剤はDRPLAの抗体への結合を妨げることが判明した。DRPLAが可溶化し、且つ、抗体と結合する一連のバッファーを検討したところトリス塩酸バッファーにエタノール等の有機溶媒を含む系においてDRPLAは抗体へ結合した。しかし溶出蛋白を調べたところ、DRPLAは精製されておらず、電気泳動精製法に切り替えた。大型電気泳動装置を使い、大量の試料のSDS PAGEを行い、ゲルからDRPLAのバンドを切り出した。バンドのゲルから本酵素を電気的に回収する装置を作製し、これらによってDRPLA精製品を得た。予備実験の結果によるとこの電気泳動精製によりDRPLAのほぼ単一バンドを示す試料が得られる見通しがついた。この方法は基本的には他の蛋白にも適用でき、その応用範囲は広いと考えている。 今後の予定としてはDRPLAの二次元および三次元結晶の作製を計画の手順に従って行う。
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