研究概要 |
1)合成したPtCl_2(1R,2R-diaminocyclohexane)(PtCl_2(1R,2R-dach))を使用し、DNAの塩基当り0.08-0.05個の白金錯体(Pt(1R,2R-dach))が結合するよう、DNAにPt(1R,2R-dach)を加え、一塩基当り0.05-0.06個の白金錯体の結合したPt(1R,2R-dach)-DNA化合物を得た。 2)調製したPt(1R,2R-dach)-DNA化合物を、マウスに一ヶ月間程免疫した。時々採血し、ELISA(Enzyme Linked Immunosorvent Assay)法によりマウスの血清中にPt(1R,2R-dach)-DNAのポリクローナル抗体ができている事を確認した。このポリクローナル抗体の選択性を競合ELISA法で検討したところ、他の白金-DNA化合物(cis-Pt(NH_3)_2-DNA,trans-Pt(NH_3)_2-DNA)に対しては余り強く結合せず、またPt(1R,2R-dach)-DNAの立体異性体であるPt(1R,2S-dach)-DNAに対しても弱く結合するのみであった、しかし、抗原であるPt(1R,2R-dach)-DNAに対しては強く結合した。以上の事より、ポリクロナール抗体はPt(1R,2R-dach)-DNAにかなり特異的に結合する事が判った。 3)Pt(1R,2R-dach)-DNAに対し抗体が出来たマウスの脾臓を取り出し、ミエローマ細胞と細胞融合させ、HAT培地により細胞融合したハイブリドーマを選び出した。ハイブリドーマの中で、ELISA法で抗Pt(1R,2R-dach)-DNA抗体を産出するものを選択した。5種類の抗Pt(1R,2R-dach)-DNA抗体を産出するハイブリドーマが得られた。この内の一種のハイブリドーマを増殖させ、Limiting Dilution法により、抗Pt(1R,2R-dach)-DNA抗体を産出する単一なハイブリドーマに精製した。この、ハイブリドーマが産生するモノクローナル抗体は、IgMのサブクラスでκチェインを持つことが判った。しかし、種々の白金-DNA化合物と競合ELISAを行った所、あまりPt(1R,2R-dach)-DNAに対して選択的でないことが判った。現在、他のハイブリドーマが生産するモノクローナル抗体に対して検討中である。
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