研究概要 |
薬物代謝の遺伝的多型に中心的役割を担う、CYP2Dサブファミリーの中枢における役割を明らかにすることを目的に、BTLあるいはPLの酸化的代謝活性を指標として、種々検討を行った。その結果、ラット以外にも家兎、豚、牛などでこれらの酸化活性が検出された。ラットや家兎における脳Msの活性は、肝Msに比べて遥かに低く、肝活性の100〜1000分の1程度であった。これらの活性が脳内では元来低いのか、脳Ms調製過程で失活するのか、または本来必要な成分がMs調製過程で欠落するのか現時点では明かではない。しかし、興味深いことに家兎脳Msにラット肝より精製したfp_2を添加することにより、PL酸化活性が大幅に上昇した。また、家兎のみならず、豚脳MsにビタミンCを添加することにより、PL酸化活性がやはり増大した。我々は既にラット肝MsにおけるPL酸化反応においてビタミンCを反応系に添加することにより、4位酸化成績体の定量値が増大するが、これはNADPH-P450還元酵素、あるいはP450から生成して来るスーパーオキシドにより、4-hydroxypropranololが1,4-naphthoquinoneに変換される反応が、スーパーオキシドスカベンジャーであるビタミンC添加により、阻害された結果であることを明らかにしている。従って、前述の脳Msにおける電子伝達におけるfp_2の律速段階としての可能性に加えて、脳MsにおけるPL酸化反応において、活性酸素分子種の寄与に対しても考慮を払う必要性が出てきた。家兎脳MsのBTL酸化活性は、ラット肝P450分子種CYP1A及び2Dに対する抗体で一部阻害された。さらにラット肝由来のP450抗体を用いて、家兎、豚の脳MsをWestern blot分析で調べてみたところ、ラットCYP2D抗体と交差する蛋白の存在が認められた。抗原として家兎に投与したラットCYP2Dサブファミリーは元々蛋白として50KDの高分子ペプチドと、32KDの低分子ペプチドの2種の蛋白を含むものであり、電気泳動的にこの2種の蛋白を分離し、各々に対する抗体作成を試みたが50KDに対する抗体のみが得られた。この抗50KDペプチド抗体を用いて、改めてWestern blotを行ったところ、(50+32)KD混合物に対する抗体を用いたものと類似の結果が得られた。
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