α1-酸性糖タンパク質(AGP)遺伝子の発現について 研究計画に従い、I:ラット肝臓を中心とするin vivo系、II:培養細胞レベルでのAGP合成誘導の系、III:AGP遺伝子のin vitro発現系による研究、を行った。以下、各々の平成四年度の成果について報告する。 I:(1)ラット肝臓におけるAGP遺伝子の発現について、我々はAGPがレチノイン酸(RA)によっても誘導されることを見いだした。これは今までに報告がなく、最初の発見である。(2)AGP遺伝子において、4か所のDNaseI高感受性部位が、正常ラット肝臓で検出されている。T3、RAの他AGPの誘導が報告されているグルココルチコイド、また炎症時のDNaseI高感受性部位を比較したところ、T3、RA、グルココルチコイド投与時の高感受性部位は全く同一ではないが、よく似ていた。しかし、炎症時におけるそれは幾分異なり、炎症時における発現機構とホルモンによる発現機構に差のあることが、推定された。II:T3誘導的にAGPを発現する培養細胞を得る努力を重ねているものの、まだ成功していない。III:(1)AGP遺伝子の第一イントロン中にTRE活性のあるDNA断片を得ているが、ゲルシフトアッセイにより、この断片にT3リセプターが結合することがわかった。また、フットプリント解析を行い、リセプターの結合領域を定めた。(2)AGP遺伝子のプロモーター領域をサブクローニングし、CAT遺伝子のプロモーターとしてつなぎ、CATの発現を調べたところ、転写開始点から400bp下流の領域までがT3依存的な発現に必要なことがわかった。(3)AGPがRAにより発現することが見い出されたので、RAREを検察したところ、TREがまたRAREとしても働くことがわかった。
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