肝臓は肝実質細胞と非実質細胞から構成されている。解毒、糖新生、血漿蛋白の合成等の肝機能は実質細胞が司っているが通常の培養条件においては時間の経過と共に、生体内の状態から逸脱し数日で高度に分化した機能は消失することが知られている。私はハイブリッド型人工肝臓のバイオリアクターの構築を目的とし、実質細胞の肝機能を高度にそして長期間にわたって維持可能な条件を検索したところ、実質細胞を非実質細胞と混合培養することにより肝特異機能が飛躍的に上昇することが明かとなった。そこで非実質細胞の肝機能促進効果の本体を解析するために肝特異機能の一つであるチロシンアミノトランスフェラーゼ(TAT)誘導能を指標として用い種々の検討を行った。 まず効果がアルギン酸カルシウムによって包括固定化された細胞で発現されるか否かを検討した。両細胞群を混合し同時固定化したものと肝実質細胞のみを固定化したものについて単位ゲル容積当たりのTAT活性を比較したところ同時固定化したゲルで促進効果が観察された。次にこの促進効果をもたらす細胞種を特定することを試みた。密度勾配遠心法により非実質細胞を分画し各々について促進効果の有無を検討したところクッパー細胞に富む分画が促進効果を示すという結果が得られた。さらに本効果が液性の因子によるものかあるいは細胞間接触が必須であるかを検討した。非実質細胞群を単層培養した後、紫外線照射により死滅させ固定したFeeder layerは促進効果を示さなかった。また非実質細胞の馴化培地を作成し実質細胞に添加したところ促進効果がみられたことから、細胞間接触の寄与も否定できないが少なくともなんらかの液性因子が肝機能の促進に寄与していることが明らかとなった。
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